なりたい自分になる

「なりたい自分になる」。小林麻央さんの遺した言葉だ。

俺は、なりたい自分になっていいはずがない・・・。

勝手気ままな人生を送り多くの人に迷惑をかけてきたせいか、ここ数年はそんなことばかり考えていた。自分を罰するつもりで、やりたくもない苦手に決まっている仕事を選び、転職した。このまま静かに死んでいけば良いとさえ思っていた。でもしょっちゅう辞めたいと思う。生きようとする。ああ、人という生き物は、死のうと思っていても、本能はひたすらに生きようとするんだな。転職してから一番分かったのはこれだ。

生きる渇望か、休日を使って塾の採用試験に行ってみた。過去じっくり磨いた技術はすぐには衰えない。登壇し説明する時間が楽しくて仕方ない。必要と思ってもらえる自分がうれしくて仕方ない。すぐに採用をいただいた。今は気付くと教育のことばかり考えている。いつ現職を去るべきかを考えている。体全体が、元気に生きることを欲している。

・・・急な人事異動があり、新転地での初勤務となった。

今まで一年間で無能なりに頑張って身につけてきたことが今日だけでいくつも否定され、自分の中で静かに強烈なパニックが起きて、混乱状態で自分が何をやっているのか分からなくなってミスが重なり、いつものように終盤惨めな気持ちになってしまった。自分はこの場にいない方がいいんじゃないか。またそんなことばかり考えて、「この場に」を「この世に」と、意味を広げてしまわないよう自分を落ち着けるので精いっぱいになって、仕事になんか集中できなくなって、やるせなくて泣きそうになるのを何とか堪えていたら退勤時刻になっていて、逃げるように仕事場を後にする……そんな一日が終わった。

帰りの電車の中でも苦しくて苦しくて。辞めたいが熟成されて死にたいになってはいけない。そうなる前に、この仕事を辞めなくてはと思った。(ほら、気付いたら生きようともがいている。)来月には違う職場に行ってそれからあれをやって、そうだあれも…!

・・・でもそこで「待てよ」と今日の自分はうまく冷静になれた。これから考えていることを総合し、今年いっぱいは今の仕事を続けるのが正解だと思った。そして・・・

今年いっぱい苦しみの中で生き抜いたら、今までの自分を赦そう。

自分を赦して、「なりたい自分」になろう。そう思ったのだった。

自分を唯一表現できる数学を使って、自分が唯一必要とされる教育という世界に引き返そう。「3年前の人生選択、思いっきり間違ってたみたい。恰好悪いけど戻ってきました!許して~。」って、笑って言って戻ってきたい。そして、弱さ惨めさを分かった教育者としての自分を通して、弱き者に優しく手を差し伸べられる人でありたい。

苦節30年、「なりたい自分」が、ようやく実像となりつつある。

その人生を歩めるなら、幸せの全てを欲しいとは望まない。

だから、神様ご先祖様。

どうか、力を貸してください。

あと4ヶ月、踏ん張る元気を分けてください。そして・・・

「なりたい自分」として生きさせてほしいです。